人工知能を活用した最先端のアスリート・トラッキングシステム「Simi Motion」ワークショップレポート
2025年11月1日
2025年9月18日(木)、東京で「マーカーレスモーショントラッキング ワークショップ」を開催しました。
講師には、東京2025世界陸上で実際の競技中モーショントラッキング計測に携わった Simi Reality Motion Systems社(ドイツ・ミュンヘン) の Thomas Schneider氏、そしてSimi Motionを研究に活用されている 英国グロスターシャー大学のAthanassios Bissas教授 をお迎えしました。
2時間以上にわたるセミナーでは、Simi社のハードウェアやソフトウェアの仕組みを丁寧に解説いただき、さらにBissas教授からはご自身が手掛けてきた研究事例を交えながら、マーカーレスモーショントラッキングの可能性をわかりやすくご紹介いただきました。
Simi Reality Motion Systems社とは
Simi社は30年以上にわたり、モーショントラッキングや動作解析システムの開発・製造を手掛けるドイツの企業です。
2018年に大手自動車関連企業のグループ傘下に入り、AIとコンピュータビジョン技術を融合させたマーカーレス3Dモーショントラッキングの分野で世界をリードしています。
グローバルシャッターを採用した高精度カメラは、野球のスイングのような高速動作でも歪みがなく、屋外や水中、雪上といった過酷な環境にも対応可能。レンズの交換で小規模から大規模まで柔軟に対応できるため、スポーツシーンを問わず幅広く利用されています。
AIによる特徴推定から逆運動学モデリングまでを自動で行う「Simi Nemo 3D」は、人物だけでなくラケットやボールといった物体の3Dトラッキングも可能。複数人を同時に計測できる点も大きな特長で、世界陸上や国際大会などでも広く採用されています。
デモンストレーションの様子
当日は、持ち運び可能な1ボックス構成の「Simi Nemo 3D」を用いてリアルモードトラッキングを実演。
参加者の皆さまにも協力いただき、複数人での動作計測を行いました。
計測データはその場でタブレット上に表示され、アスリートへのフィードバックが即座にできることが紹介されました。
また、フォースプレートや筋電センサ、圧力インソールなど他社製センサとの連携にも対応しており、その拡張性や柔軟さに多くの参加者が興味を示していました。
Athanassios Bissas教授の講演
Bissas教授からは、マーカー式・マーカーレス式それぞれの特長を比較しながら、現場での活用事例を交えてお話しいただきました。
「世界陸上やロンドンマラソンのような現場では、マーカーを装着するだけでも数時間を要します。
しかし、Simi Nemo 3Dならわずか数秒で準備が整うのです。」
さらに、ウサイン・ボルト選手の映像データを例に挙げながら、
「本番そのままの映像から3D関節座標や角度、スピード、重心を正確に分析できることが、Simiの革新性です。」
と語り、研究の現場でいかにSimiのテクノロジーが役立っているかを紹介しました。
また、無料アプリとの違いにも触れ、
「私たち研究者にとって最も大切なのは“精度”。
Simiのマーカーレス技術は、論文執筆や学術研究において欠かせない信頼できるツールです。」
とコメント。人物だけでなく物体も正確に追跡できるSimiの技術が、モーションキャプチャの新しいスタンダードになりつつあることを強調しました。
セミナーを終えて
質疑応答では、「子どもの動作評価にも使えるか」「スポーツ以外の分野での応用は?」「IMUやSDKとの連携は?」など、多くの質問が寄せられ、会場は終始活気に包まれました。セミナー後もSchneider氏に直接質問をする参加者の姿が絶えず、関心の高さがうかがえました。
主催側としても、リアルタイムでのマーカーレストラッキングを目にし、
「これほど簡単で、しかも高精度な計測ができるシステムは他にない」と改めて実感。
Simi Motionの可能性を再認識する機会となりました。
確かに、Simi Motionは決して安価な製品ではありません。
しかし、世界の名だたる競技会で採用されるその技術力は、アスリートの成長を支え、バイオメカニクスの発展を大きく前進させるものだと感じています。
セミナー終了後は、Schneider氏とBissas教授を囲んで焼き鳥店で打ち上げを実施。
「次は相撲を計測してみたい!」というユーモラスな話題で盛り上がり、いつか両国国技館での計測が実現する日を夢見ながら、温かい雰囲気の中でセミナーを締めくくりました。